「チョークとソロバン」両立への道

塾講師として数字を出す「営業力」を身に着ける勉強ブログ

【書評】営業は準備力 野部剛

今の営業は一言で言えば、「ソリューション営業」が求められています。ソリューション営業とは、お客様が、今、どんな問題を抱えているのか、あるいはどんなニーズがあるのかを的確にくみ取り、それに即した自社の商品やサービスを選んでもらうという営業活動です。従来のように、お客様の意見も聞かずに一方的に押し売りや飛び込み営業をするとか、反対に、なんでもお客様の言いなりになってしまう御用聞きに終始するのではなく、お客様との信頼関係を築いたうえで、対等に、長く取り引きできる関係を目指していきます。

(中略)①事前準備を行い、②機会を設けて商品の説明をさせてもらい、③お客様のニーズを聞き出し、④自社製品やサービスを提案し、⑤商談成立(クロージング)という5つのステップを踏む流れになります。需要が供給を上回っていた頃は、最後の⑤クロージングに注力し、一方的に商品の説明をして、買うか買わないか迫るような乱暴な売り方をしても売れました。しかし今、求められているソリューション営業で要になるのは、③お客様のニーズをヒアリングすることです。そのためには、いかに①事前準備をしておくか。実はこれが、成否のカギを握っているのです。(P.Ⅴ~Ⅵ)

☞営業を学び始める前の私がそうだったように、営業は「売り込むこと」というイメージがこれほど定着しているのは、実際にそうした営業で成果が出せていた時代(需要>供給の時代)が確かに存在したことが背景にあることが分かる。しかし、今は需要<供給の時代。時代に合わせて成果の出る営業の在り方も変わっている。

 

ヒアリングを実りあるものにするには、①の事前準備が欠かせません。なぜなら、あらかじめ、お客様がどんな問題を抱えているのか、仮説を立てながら事前に準備しておいた人ほど、お客様にヒアリングしたときに、その仮説に照らし合わせながらどう対応すべきか瞬時に判断できるからです。

カーディーラーにやってきたお客様も同様です。そのお客様自身のライフスタイルを事前に調べておくことはできませんが、車を買い替えたいと思っているお客様の”傾向”をあらかじめ掴んで体系化しておくことはできます。車の買い替えを検討しているお客様は、車に対して何を求めているのか、燃費の良さなのか、広さなのか、小回りがきくことなのか…等々について、情報収集しておくことはできるはずです。

また、なぜ今、車を買いたいと思っているのか、車を買ったら何がしたいのかなどについても、これまでの顧客データからまとめることはできるでしょう。車に対して求めるものは、20代と60代では違うかもしれません。ならば、各世代ごとに、車に対してどんなことを求めている傾向があるのかも併せて、あらかじめリサーチして準備しておけばいいのです。

また、車の買い替えを検討しているお客様は、他のカーディーラーも検討しているはずです。ですから、他のカーディーラーの事情などを把握しておくことも、事前準備の一つになります。

こうした結果を踏まえ、ある程度、想定できる回答を用意する。その上で、来店したお客様ごとのニーズをヒアリングし、最終的に、どの商品をおすすめするか判断すればいいのです。お客様自身も気づいていなかったニーズを引き出し、事前準備情報と照らし合わせながら整理して、「あなたが欲しいと思う商品やサービスはこれです」と見つけ出す。これが今の営業に求められているソリューション営業です。(P.8~9)

☞授業で事前準備(=教材研究)が欠かせない事情に似ている。事前の教材研究がしっかりしていれば、生徒の疑問を拾って発展させることができ、場合によっては当初の目標以上の学びが達成されることもある。深く聞き取るためには、そのための土台ができていなければならない。

生徒・保護者のニーズ(学校の補習を求めているのか、入試対応力の養成を求めているのか)は、ここで言われているようにある程度体系化ができそうだし、今の時代、塾にどんなことが求められているかを調査等から知ることもできる。そして、他塾の情報も持っていることで、いかに自塾の取り組みがニーズに応えるものであるかを説得力をもって伝えることができる。

顧客自身が気づいていなかった潜在的なニーズまで引き出すレベルまで到達するには、確かにそうした準備が必要だろう。

 

トップセールスマンは、お客様の話をとことん聞いたうえで、「松・竹・梅」から商品を選ばせるようにしています。トップセールスマンの話に納得した上で購入(契約)するので、どれを選んでも、「私が選んだ」と実感でき、お客様の満足度は高いのです。

特にお客様から予算を絞られてしまった場合、この選択式提示は重要です。多くの営業マンは、ついついお客様からいわれや予算を鵜呑みにして予算内のご提案に終始してしまいます。しかし、これではお客様の満足感は得られません。

トップセールスマンは、お客様の予算とニーズにギャップがある場合、先の「松・竹・梅」での選択式提示を活用して、予算内の提案を「梅」、予算オーバーではあるもののニーズをすべて満たす提案を「松」、その中間に若干予算オーバーではあるものの優先順位の高いニーズに関してはすべて満たす提案を「竹」として、選択式提示をします。

最終的に、お客様は若干予算オーバーであっても「竹」を選択する可能性が高まると同時に、将来のアップセルやクロスセルの布石にもなり、何より自ら選択したことにお客様自身の満足度が高まります。

☞ニーズをとことん聞いているからこそ、使える方法だと思う。始めから選択肢を提示するのは意図が見え見えになりそう。ここでも「きく力」が成否を大きく左右する。

 

住宅業者のトップセールスマンは、見込みがあるお客様だと思えば、住宅展示場にお客様がいらしたとき、最長では4時間以上もお客様の話をひたすら聞いています。

4時間も話せば、お客様は十分に検討したなという満足感を得ると同時に、「この人なら、きっと私のことを分かってくれたに違いない」という感覚を抱きます。この信頼感がライバルを排除し、住宅という大きな買い物を購入する最後の決め手になるのです。

このとき重要なのが、お客様の話をひたすら聞く。傾聴する。これが信頼関係構築の第一歩です。すごくシンプルなことですが、トップセールスマンは、例外なくやっています。(P.93)

☞このご時世、「じっくり話を聞いてもらえる」ということは、普段の生活の中で実はそれほどなかったりする。それをとことんやるだけでも、信頼関係の構築に大きく寄与するのだ。

 

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ヒアリング能力=「きく力」を最大限発揮するためには、「事前準備」が欠かせないという視点が本書から得られた。質問をするにも、どんな切り口で質問をすれば、顧客のニーズが明らかにできるかは、事前に準備しておかなければその場で思いつけないことは容易に想像できる。特に顧客自身が気づいていない潜在ニーズまで明らかにするというのは、単なる物売りの領域をはるかに越え、むしろ「専門アドバイザー」とでも呼んだ方がしっくりくる。そこまでくれば顧客も一目置いて「この人から話を聞こう」と思うだろう。営業も、授業と同じく奥が深い。

 

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