「チョークとソロバン」両立への道

塾講師として数字を出す「営業力」を身に着ける勉強ブログ

【書評】顧客の心理を読み解く 聞くスキル 聞き出すスキル 藤木健

お客様は問い合わせのプロではない。自分が訊きたいことを整理できていない人は本当に多い。(中略)お客様は何らかの疑問や不都合、問題があって、企業にコンタクトをとるが、その”何らか”をお客様自身が上手く説明することができない場合が多い。この前提で考えれば、まず”何らか”を明らかにする必要がある。(中略)整理されていないお客様の会話を整理し、促し、時には軌道修正しながら、能動的に「きく」ことによってでしか、”何らか”が明らかになることはない。(P.17)

☞だから、「きくスキル」が不可欠になる。これは学習指導においてもそうで、たとえば質問に来る生徒の中には、自分がどこが分からないのか説明できない生徒が一定数いる。そんなとき、発言を整理し、疑問点を明らかにするためには能動的に「きく」ことが求められる。「きくスキル」を身に着けることは、指導にも直結するだろう。

 

問い合わせをしてくるお客様は、2つのことを求めている。1つは「論理」だ。何らかの疑問や問題を抱えているから電話をかけてくる。つまり、目的を持って問い合わせをしてきているのだ。その疑問や問題が解決されることが目的であり、その達成こそが第一の要望だ。もう1つの要望が「感情」だ。感じの良い応対であったり、気遣いやホスピタリティがある応対などをイメージしていただければいいだろう。「印象貢献」と表現したりもする。お客様として、気遣いのある応対、尊重される応対は当たり前のことであり、とくに意識していないことが多い。なぜなら、「無礼を働かれるのでは」などと、いちいち想像して問い合わせることはないからだ。しかし、そのお客様の感情の閾値を下回った応対をしてしまうと、お客様の感情はだんだんと荒れてくる。つまり、こじれてくるのだ。こうなると、いくら論理的に話を展開したとしても、対話は進まない。荒れた感情が邪魔になって、こちらの説明が伝わることがないからだ。(P.38)

☞人間は感情の生き物であることを常に念頭に置き、「情理が一致」した応対を心掛けたい。

 

【きくスキル8つの要素】

①あいづち力…話を聞いていることのサインを、タイミングよく声で表現することによって、話を受け止め促進する力。

②復唱力…相手の言葉を反復することにより、お客様の用件をズレなく理解し、共有する力。

③語彙力…豊富な言葉のバリエーションを持ち、相手のレベル、知識や状況に相応しい言葉を選ぶ力。

④要約力…相手の話の要点を端的かつ的確にまとめる力。

⑤沈黙力…自分が話し出さずに、沈黙することによって、「間」をコントロールする力。

⑥質問力…相手の曖昧なニーズや潜在的な意識を、さまざまな問いかけによって明確化する力。

⑦音声表現力…発した言葉通りの心配りや感情を、誤解されることなく相手に伝える力。

⑧心情察知力…お客様の言葉の奥に含まれる、言葉にならない感情を聞き分ける力。

(P.62)

☞主要素=⑥⑦⑧、副要素=①②③④⑤

これらの要素の中でも、根幹をなしているのが「心情察知力」「音声表現力」「質問力」であり、その他の要素は、これら3つの主要素の働きを補完する。

これらは、顧客とのやり取りを振り返り、特定の場面を想定したトレーニングを繰り返すことで、鍛えていくことができる。

 

お客様に「聞きつつ考える」心理状態になってもらうためには、どうすればよいか。そのために必要なスキルが、「質問」だ。どれほど理路整然と明確に、かつ適切に説明し、「聞いてください」と伝えたとしても、それだけでは”お客様の頭”は働いてくれない。お客様に何かを売りたい時には、お客様が自分の頭でセールスポイントを1つひとつ検討する状態を目指したい。注意事項を聞いてもらうためには、その注意事項が「自分にとってどれだけ意味があるものなのか」という重要性を理解し、記憶する状態にまで持っていきたい。(中略)この、思考を刺激するカギとなる質問を、「MQ(マジック・クエスチョン)」と名付けた。(P.141)

☞「質問型営業」においても、質問の重要性が語られているが、ここでは更に顧客の思考を促し、真剣な検討に導くカギとして質問を捉えている。授業においても、まったく発問のない授業と、ある授業では、生徒の集中度も変わってくる。授業の上手い下手は、この発問をどれほど使いこなせているかを観れば、わかってしまうほどだ。授業に通じるポイントが、次々に出てきて本当に面白い。

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「質問型営業」で、質問を繰り返すことによって顧客の真のニーズを明らかにし、それに沿った提案をすることで「お役に立つ」ことを学んできた。だが、顧客のことを知るためには、質問だけでなく、本書で説くような顧客の話の内容や感情を受け止める「きくスキル」が伴っていなければならない。質問は、やり方がまずければ尋問のような印象を与えてしまい、かえって顧客の心を閉ざしてしまうことにもなりうる。質問することはあくまで手段であり、それが目的ではない。「心情察知力」といった「きくスキル」の要素を身に着け、生徒や保護者に寄り添える対応を目指していきたい。

 

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