「チョークとソロバン」両立への道

塾講師として数字を出す「営業力」を身に着ける勉強ブログ

【書評】絶対達成する部下の育て方 稼ぐチームに一気に変わる新手法「予材管理」 横山信弘

「自分の予算は1億円だけど、このままだと7000万円しかいかない。残りの3000万円をどうすればいいだろうか?このお客様のポテンシャルはどのくらいあるのか?どのようなアプローチをすればどのくらい売上が上がるか?どんな商材を持っていけば振り向いてくれるか?」

すぐに目標予算を達成するかどうかは別として、焦点が当たっていれば目標に対する不足分がわかります。この不足分は「空白」となります。脳に空白があれば、その空白を埋めたいという心理欲求が働き、能動的に行動するものです。

これを「脳の空白の原則」と言います。(P.27)

☞目標と現状との差を意識させることが思考を促すことは、学習指導の場面においてもよくある。例えば入試過去問の点数が目標点(=合格者平均点等)に達していない場合、「あと何点あれば達成できるか」「そのためにはどの問題が正解になればよいか」を必然的に考えることになる。それができれば、得点しなければならない問題と同じタイプの問題を問題集で繰り返し解き直すなど、具体的な行動に繋がってくる。

筆者の横山さんは、「そもそも8割の営業は目標を意識していない」という。それでは思考にも具体的な行動にも繋がらず、何となくいつもやっていることを繰り返すだけになってしまい、目標の達成は覚束ない。目標は自分を追い込むためではなく、空白を意識するために設定するのだ。それが再確認できた。

 

「できる営業」は、どのような業界で営業をさせても、どんな規模の企業に入っても結果を出し、目標予算を達成させてしまいます。それが自分の仕事だと腹に落ちているから、そのような結果を引き寄せるのです。

ところが、「こんな目標数字なんか達成できるわけない」と思っていると、お客様とどんなに話をしても、有益な情報をもらっても、まったく頭に入ってきません。気づきがないのです。そして数字をつくることができないのは、自分の責任ではなく、業界や自分の知識不足のせいにしてしまうのです。目標達成を当たり前に思い、焦点を当てることがいかに大切か、おわかりいただけるかと思います。

☞そもそも目標を達成させる気がないのに、方法論だけなぞってもうまくはいかない。生徒の成績を上げる気がないのに、授業が上手い人のやり方を表面だけなぞってもうまくいかないのと同じこと。やはりマインドセットは大切。

 

営業はお客様との人間的なお付き合い、いわゆる「信頼関係(ラポール」を構築するために存在します。お客様への「情報伝達」のために営業が存在するわけではないのです。

では、どうすれば営業はお客様との信頼関係を構築することができるのでしょうか?私が本書で一番強調したい技術は、「単純接触効果を増やす」というものです。

「古臭い営業スタイル」とバカにしてはいけません。これはアメリカの心理学者のロバート・ザイアンスの実験でも証明されています。(中略)

営業が結果を出すために必要なことは2つあります。一つは1章で述べたように、目標に焦点を当てること、もう一つはお客様との接触回数を増やすこと、つまり行動量を圧倒的に増やすことです。(P.41~42)

☞今までを振り返ると、ここがあまり意識できていなかったと思う。保護者とは1回1回の面談でじっくりお話をするので、それで十分。あとは向こうから相談があった時に丁寧に応じればいいくらいに思っていた。

だが考えてみれば、半年に1~2回しか会わない人物からヒアリングされたところで、本当の悩みやニーズを打ち明けたくなるものだろうか。さらに言えば提案された商品を購入したいと思えるだろうか。気心の知れた相手にこそ、相談したい・頼みたいと思うのではないだろうか。「営業は商品ではなく、自分を売る」という言葉の真髄は、このあたりにあるのだろう。

そういえば、あまり直接話をしていない保護者からも絶大な信頼を寄せられることがある。そういう保護者は決まって、「生徒が家で授業の話をよくするご家庭」の保護者だった。「いつも先生の授業は実験があって楽しいって言うんですよ」「先生の授業なら、これからも受けさせたいです。」と言ってくださる。そうした信頼関係のあるご家庭は、こちらからの提案もすんなり通ることが多い。

だが、家庭にも色々ある。家で塾の出来事をワイワイと話すご家庭ばかりではない。そうしたご家庭には、まず授業での様子や、成長したところを積極的に伝えるところから始めてみよう。

 

「予材管理」は、最低でも目標を達成させる新マネジメント手法です。「目標達成を目指す」のではなく、「どんなに悪くても目標達成」です。(中略)

「予材管理」の「予材」とは、予定している材料のことを指します。

「予材」は、「見込み」「仕掛り」「白地」という3つから構成されています。

標数字があって、「このままなら80%くらいで落ち着きそうだな」という状況があった時、この80%の部分を「見込み」と呼びます。(中略)

実際に見積もりや提案書を出した先に、提案活動を繰り返しているため、ひょっとしたら注文がくるかもしれない。このような現在仕掛かっているものを、「予材管理」の中で「仕掛り」と呼びます。(中略)

ここで大切なのは、「見込み」と「仕掛り」を合わせて、目標予算の100%をはるかに超えていることです。当たり前ですが、成約率は100%ではありません。その中で空白を埋めていくためには、「見込み」と「仕掛り」で100%をはるかに超えていなければならないということです。(中略)

そして3つ目の「予材」が「白地」です。お客様のところに行って信頼関係を築いている段階で、まだ具体的に仕掛かっているとは言えないものです。

「仕掛り」がお客様に提案をしている、あるいは具体的な案件が進行している「リーディング」の状態だとすれば、「白地」はお客様と「ペーシング」をし、ラポールを構築している段階です。ペーシングとは、相手とペースを合わせていくことです。一番簡単なペーシングの技術は、「単純接触回数」を増やすことです。

「白地」は種まきのようなものです。種を撒いて、その種の特性に合わせて手入れをします。水をやったり、虫を駆除したりしながら、芽を育てるのです。こうして信頼関係が構築され、無事に花が咲いたら、「見込み」の段階になっていくわけです。

それでは、「見込み」「仕掛り」「白地」の3つを合わせた「予材」はどのくらい積んでおけばいいのでしょうか。できるだけ多く、ではいけません。ビジネスには定量的な表現が必要です。「見込み」「仕掛り」「白地」を合わせて、目標予算の2倍の材料を積み上げるのが基本です。(P.86~97)

☞たとえば季節講習の講座数の予算が「100」だったとして…

①在籍している生徒の中で80%受講が見込めるのが60件=「見込み」

②在籍している生徒に提案中で、受講の可能性があるのが60件=「仕掛り」

③問い合わせや講習体験生、過去の企画参加者など、種まきの段階が80件=「白地」

①+②+③=60+60+80=200(=100×2)

というように、目標予算の2倍の「予材」を積み上げるのが「予材管理」の手法。

「目の前の1件を確実に成約に持っていく」のではなく、「成約率が100%ではないことを前提にリスクヘッジとして数字を積み上げる」という発想。

重要なのは③の「白地」の生徒・保護者にも、日頃からアプローチをかけて信頼関係を構築しているかどうか。「そろそろ塾に通わせようか」という状況になったとき、そこで信頼関係が構築できていれば「あの塾の話を聞いてみよう」と思ってもらえる。

営業にも、こうした地道な種まきが必要なのだ。

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これまで、実際の営業の場面におけるアプローチの考え方や手法を中心に学んできた。「質問型営業」「提案型営業」など、呼び方は様々にあっても、基本は「顧客のニーズをしっかりヒアリングし、提案すること」だと分かってきた。

そのためには「聞くスキル」や「事前準備」が必要なことも学んできた。

しかし、本書で説かれていることは、それらの手法とは根本から発想が異なる。

まず、営業の仕事は「目標を達成すること」「顧客との信頼関係をつくること」だと筆者は断言している。

塾も企業である。企業は利益が無ければ存続していくことはできない。継続して顧客の「役に立つ」ためには利益を出す必要があり、そのためには目標達成は必要である。その現実から目を背けてはならないと気づかされた。

また、信頼関係を構築する重要性も本書を読んで腹に落ちた。考えてみれば「質問型営業」「提案型営業」をするにも、信頼関係がなければうまくいくわけがない。

「単純接触効果」を生み出すための大量行動を、定量的に実践していきたいと思った。

そして、目標達成のためのマネジメント手法が「予材管理」。リスクヘッジの発想で、最低でも目標達成を実現するというのは、目から鱗だった。

このブログのタイトルにも「数字を出す」ことを掲げているが、そのために根本的に必要なことが、本書を読んで理解できたと思う。

 

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